難題の解決策、住宅→オフィスへのコンバージョンの話
みなさんこんにちは、AGILE MIND(以下アジャイルマインド)代表の田中です。
このコーナーでは、アジャイルマインドという会社の思いやスタンス、どんな取り組みをしているかを知っていただけるよう、当社が手がけている
仕事の「ちょっと裏側」などについてご紹介していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
今回はその初回。
当社のオフィスにまつわるお話をさせていただきます。
アジャイルマインドのオフィスは、浜松市中区鴨江三丁目。
秋葉坂下の交差点近くの眺望の良い高台にあります。
1971年築の木造住宅で、和室がたくさん並んでいたこの平屋住宅を、オフィスへとコンバージョンしました。
■どの会社も引き受けなかった難条件の物件相談
そもそものこの物件との出会いは、とある金融機関と不動産会社から、同時タイミングで持ち込まれた相談でした。
「相続した物件を手放したいというオーナーがいるんだけど、どこも引き受けてくれない。田中さん、何とかならないだろうか」
その物件は、土地が190坪。そこに1971年の木造住宅と1953年築の木造アパートが建っていました。
このアパートは、過去に精神疾患を患ったことのある方などが、通常生活への復帰の第一歩として共同で生活をする施設。
旧オーナーファミリーが稼業として運営してきたもので、現在も数名がここで生活をしていました。
しかし、相続した60代の女性は「自分がこれからも引き継いでやっていくのは難しい」と考えました。
いわゆる「下宿」スタイルのため、ご飯を作るのも大変になってきましたし、年齢を考えても長くはやれないだろう。
それなら、この機会に手放そう。そう決断されたわけです。
とはいえ、長年運営してきたこのアパートを閉めるのも忍びない。
社会的弱者である入居者のみなさんを追い出すようなことはしたくない。
その思いから、「アパートの存続を条件に引き取ってくれる人はいないだろうか」というのがそのオーナーの要望でした。
しかし、どの不動産会社に相談しても、その条件で買いましょうという声は上がりませんでした。
ほとんどの不動産会社は、土地を買ったら古い建物は取り壊して、すぐに宅地造成して売り出したいと考えます。
何年続くことになるかわからないアパートの運営を引き継いで、気長に収益化できる時を待つような会社は確かにないでしょう。
引き受け手がなく困りきっていたオーナーと、相談を受けた金融機関。
そんな時にアジャイルマインドの事を思い出していただき、相談をいただけたのです。
■どうやったら成立するか、を徹底して考えた結果・・・
いきなり結論をお話してしまうと、いろいろと考えた結果、私はこの物件を買い受けることにしました。
売買契約の成立です。
アパートを存続させる以上、売却は難しく短期的な収益化は望めません。
しかし、大きくはないもののアパートの家賃は入ってくるわけですし、古い住宅の方をどうするかにメドをつければ、採算が見込めないわけではないんじゃないか。
そう考えて、さまざまな方法を検討しました。
築50年超、65㎡の木造住宅に借り手がつくか・・・と考えると、それは難しい。
それなら、アジャイルマインドのオフィスにしたらいいんじゃないか!
そう考えたことで、ひとまず収益が成立する姿が見えてきました。
こうして私は、この物件を購入することを決めました。
■「空き家対策」のケーススタディとして
ここからは少し、物件を購入してからの「コンバージョン」のお話をしたいと思います。
老朽化した建築物に向き合う場合の選択肢には、一般的に「建替え」「売却」「リフォーム」がありますが、その「リフォーム」において、単なる修繕・改装にとどまらず、既存の建築物に新たな価値を付け加える方法として「リノベーション」と「コンバージョン」という手法が用いられます。
「リノベーション」という言葉はだいぶ認知されるようになりましたが、これは今ある建物の用途を変えないまま価値を再生することです。
一方で「コンバージョン」は、用途を変更することで価値を再生する(例えば倉庫を賃貸住宅や店舗にするなど)場合に用いられます。
実はこの物件を買い取って、オフィスにしようと決めた背景には、コンバージョンによる「空き家対策の事例を作り出す」ことに挑戦したいという思いもありました。
空き家は全国に800万戸(静岡県は30万戸)とも言われています。
昨今「空き家問題」が話題になっていますが、このまま空き家が増え続けると、放置された家が倒壊する危険性が上がり、防犯性および衛生面や景観の悪化など、地域全体にさまざまな影響を及ぼします。
結果的に、私はこの物件の工事で古い住宅をオフィスへ用途変更=コンバージョン(conversion)することで、空き家問題を1つ解決しました。
空き家を持て余して困っているオーナー様に、私の事例を参考にしていただきたい。そうも、考えたのです。
そんな思いもあり、いかに魅力的なオフィスとして再生するか、その内容にもこだわりを持って取り組みました。
このオフィスのコンセプト=空間のテーマは「人が集まる場所」です。
地主様はもちろん、さまざまな人に集まっていただき、情報共有してもらえれば、会話の中で新しい仕事を得たり、共通の趣味の友人ができたり、果ては縁談につながったりということもあるかと思います。
地主様同士で「アジャイルマインドに行こう」と誘い合って、気軽に寄ってもらえる場所にしたいと考えました。
■コンバージョンの様子をチラッと公開
住宅からオフィスへのコンバージョンですから、実際の工事はだいぶ大掛かりなものになりました。
まず、内壁、床、北面外壁は解体し、柱、梁、屋根、残り3面の外壁は残しました。内装をほとんど取り外すことになりますので、写真のように基礎、柱、梁などの躯体だけを残して、床や内壁は撤去しました。
こちらは天井の写真。天井や壁にはグラスウールを貼って断熱性能をアップしました。
梁は塗装せずそのまま。梁の一部が曲がっているのは、製材されないままの自然の材料を使っていたからのようです。
既存の柱はホワイトで塗装。壁~天井にかけては石膏プラスターを左官工事で仕上げています。
今回、私自身も施工中は左官DIYに参加しました。地主様の中でもセルフリノベに挑戦される方は数多くいるので、自分もやってみたいという気持ちがありました。難しかった!でも楽しかったです。
こちらの写真は、玄関すぐ横のカウンターキッチン。
手前側にはイスを並べ、来客が座るスペースにします。キッチンは、朝にコーヒーを淹れて飲んだり、夜は来客にお酒と料理をふるまったりする空間です。
オフィスには珍しいシャワーブースもあります。
実はこのオフィス、将来的に私が長期不在の間は、宿泊施設として貸出できるように計画しています。
ベッドはそのときに設置するとして、シャワーブースとキッチンがあれば一通りの生活はできますよね。
今回の空き家と同時に購入した隣のアパートを含め、両方まとめて民泊として出せればいいな、ということも構想しています。
■目の前の利益に勝るさまざまな価値
今回の案件では、「アパートの存続を条件に買い取る」という元オーナーのご要望にお応えすることができました。
相談を受けた金融機関も、相続問題を解決して資金化し、その資金をお預かりすることができました。私にはローンを貸し付けできました。
アジャイルマインドにご相談いただいたことで、それぞれにハッピーな結果を得ることができたと思います。
では、私にとってのベネフィットは何だったのでしょうか?
まず、視認性が高くとても良い場所にオフィスを構えることができました。
この土地は大通りに面しており、車も人も数多く通ります。その人たちが信号待ちの間にふと見上げると、当社の外観が目に入ります。
とても目立つので、たくさんの人に当社のことを知ってもらえるはずです。
次に、金融機関から持ち込まれた相談を解決したという実績ができました。アジャイルマインドに相談すれば何とかしてくれるかも。
そんな期待値を持っていただけるきっかけになったことは、私にとって大きな成果です。
そしてもう一つ大きな成果として、前述した「空き家対策の事例」を作り出すことができたという点もあります。
もちろん、事業としての最終的な結果はまだ先です。
でも、現時点でも様々なメリットを得ることができて、将来さらに事業として大きな収益をもたらしてくれる可能性があると考えると、とても夢のある事業のチャンスを得ることができたと思います。
今は、アパートに住われている方と一緒に掃除をしたり、月に1回話し合いの場を持って、どうしたら暮らしやすくなるか意見を聞いたりして、入居者の満足を上げることに取り組んでいます。
そういう意味では、社会貢献という一面もある案件だと実感しています。
▲オフィス外観。右手の建物が運営を継続しているアパートです。
■可能性を広げるのは「時間軸」と「アイディア」
アジャイルマインドは、「地主の悩み解決をミッションとする」会社です。
そこには、他の不動産会社に比べて「長い時間軸で事業を考える」というスタンスにあります。
すぐに収益化することを目指せば、方法は限られてしまいます。しかし時間をかけることを良しとすれば、解決策は大きく広がります。
そして、安直な判断をせず、徹底してその解決策を考えれば、必ず道は開けると思います。
私自身も不動産オーナーです。
RCマンション、木造アパート、戸建て、貸駐車場、貸地などさまざまな種類の不動産を所有しているので、同じ不動産オーナー様の悩みに共感できますし、相談に乗れると確信しています。
解決困難と考える物件でも、私には有効に活用できるアイディアがあります。
「とりあえずアジャイルマインドに相談してみよう」と思ってもらえるような、悩める地主様にとって身近な存在でありたいと思っています。